Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
こう返辞を伝えているのを聞いて、東儀は、
「明夜? 明夜は郁次郎の首を斬る日だのに、尊公が、立ち会わぬのは甚だ困る」
「いや、夜明けまでには、立ち帰ります」
「して龍山公は、どこにおられるので」
「ご親戚だそうで、八重洲河岸の小笠原左近将監様のお屋敷に、ご滞在ということです。ご隠居のお身ではあり、ご微行のことなので、よほど、質素にお住居と見えます。――折から、明夜は八月十五日、ご邸内に名月の宴が催されるから、月見がてらに、訪ねて参れという有難いおことばなので」
「あ。なるほど、あしたは十五夜だ」
東儀は、去年の名月を思い出して、なんとなく、戦慄された。
翌日の夕刻になると、羅門は、常になくいそいそとして、黒龍紋の裃、袴、身扮も隙なく、若年寄小笠原左近将監の邸へ出向いて行った。
龍山公は、待ちかねておられた。――彼の通されて行った月見の大広間、松洩る月の影が、銀波のように、百畳の間いっぱいに映っていた。
廊下に照る月、泉水に映える月、庭の夜露にかがやく月、燭はなくとも、明るかった。
「へへっ……」
正面の老公を仰いで、羅門は、ぺたりと平伏した。それは、君臣の礼儀に等しかった。