Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
花世? ――
東儀与力はまたしても、さっきチラと見た怖ろしい疑惑に囚われ出したが、いやいや、と自分の錯覚をうち消すように首を振った。
そんなことは疑ってみるだけでも罪悪である。あんな人格者である老先生が選んだご子息の許嫁ではないか。また大番組のうちでもわけて実直家な富武五百之進の愛娘ではないか。
――それをたとえどう顔が似ているにしても、白昼、奉行所の奥へしのびこんで、唖男を吟味している拷問倉などをのぞいた奇怪な女性、大胆な女性と誰がいいきれようか。
「よそう、よそう、そんなくだらぬ迷いは」
と、東儀三郎兵衛は思い直して、いそぎ足に奉行所へ帰った。
そして早速、同心の加山と波越のふたりをよんで、江漢老人の鬼策を話すと、
「なるほどそれは妙案だ」
と、ふたりも手を打って、それぞれ手配にかかった。加山耀蔵は鉄砲笊をかついで紙屑屋に化け、波越八弥はどこから見つけて来たかと思うほどひどいボロを着こんで、頭から酒菰をかぶり、うまうまと非人に変装した。
時刻をしめしあわせて、その晩、伝馬町の牢役所の外にひそんでいる。
星空の仄あかり青く、こういう尾行仕事には、あつらえ向きな晩。