Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「さあ? ……」
と、二人が考えていると、
「顔は見えぬが、肩とか、身丈とか、どこかに記憶があるだろう。毎日こうして張込んでいても、一目でピンと勘に来ないようでは、まだ貴公たちもお若いぞ」
「畏れいりました。……成程、そういわれてみるとどうやら」
「思い出したか。いつぞやの晩、麻布のお雪の空家へ吾々が張込んでいた時に、玉枝玉枝と、二度ほど呼びながら這入って来たあの覆面だ。また貴公たちは、十五夜の晩、増上寺の境内でも見かけておるはずだのに……」
「ウム、似ています!」
「最前から四半刻も、あれに立って慄然としたまま、動き得ないように竦んでいる様子からして何とも不審な挙動だ」
「いかにも、ただの見物人ではありませぬな」
「万が一にも、大丈夫とは思うが、万一、腰の刀でも引き抜くと、この混雑の中で多数な怪我人を出すから、充分に、気をつけい」
「承知しました」
二人は目くばせを交わして、さっと、見物人の中へ姿を隠した。
東儀はその位置を離れずに、疑問の編笠の人物と、二人の部下がそれへ近づいてゆく間隔とを、三角線に見つめながら、掌脂を握って捕縄の飛ぶのを待っていたが、加山も波越も、人波の中に屈み腰になったまま、いつまで経っても、侍の背後へ迫ってゆく様子が見えない。