Japanische Klassiker mit Furigana
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えんむすび
縁結び
泉 鏡花
Lesen Sie 縁結び (えんむすび) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.536 Zeichen · 33 Bildschirme
さっと撞木を楫、渦いた風に乗って、緋の袴の狂いが火焔のように飜ったのを、よくも見ないで、
「ああ。」と云うと、ひしと謙造の胸につけた、遠慮の眉は間をおいたが、前髪は衣紋について、襟の雪がほんのり薫ると、袖に縋った手にばかり、言い知らず力が籠った。
謙造は、その時はまださまでにも思わずに、
「母様の記念を見に行くんじゃないか、そんなに弱くっては仕方がない。」
と半ば励ます気で云った。
「いいえ、母様が活きていて下されば、なおこんな時は甘えますわ。」
と取縋っているだけに、思い切って、おさないものいい。
何となく身に染みて、
「私が居るから恐くはないよ。」
「ですから、こうやって、こうやって居れば恐くはないのでございます。」
思わず背に手をかけながら、謙造は仰いで額を見た。
雨の滴々しとしとと屋根を打って、森の暗さが廂を通し、翠が黒く染込む絵の、鬼女が投げたる被を背にかけ、わずかに烏帽子の頭を払って、太刀に手をかけ、腹巻したる体を斜めに、ハタと睨んだ勇士の面。
と顔を合わせて、フトその腕を解いた時。
小松に触る雨の音、ざらざらと騒がしく、番傘を低く翳し、高下駄に、濡地をしゃきしゃきと蹈んで、からずね二本、痩せたのを裾端折で、大股に歩行いて来て額堂へ、頂の方の入口から、のさりと入ったものがある。