Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
な注意と、行き届いた親切とには、ほと/\感激したのであった。順慶に取って御台と云う人が神のような存在に見えたのは、実にそう云う時であって、どうかすると、彼女は一つ鏡の中に我が児と顔を並べながら、手ずから髪を梳ってやり、襟や袖口を揃えてやり、立たせてみたり、坐らせてみたりして、日増しに背丈の伸びて行く可憐な娘のみめかたちを、さも嬉しそうに眺めていることがあったと云う。が、人前でこそ慎んでいるものゝ、絶対に人の眼に触れぬ場所では親子がひしと抱き合って泣きくらす日もあったであろう。されば順慶は、自分の如き数ならぬ者にそう云う秘密が洩らされたことはなかったけれども、お側に仕えていると、何となく親子の間に感傷的なものゝあるのが窺われ、表面は朗かなようであっても、一種云いようのない陰鬱な気分を覚えた、そうして御台の無心らしい微笑みや長閑かな笑いごえの底にも、じっと感情を押し殺している跡が見え、心の苦しみが推察されたと云っている。しかし、それはそれとして、順慶が此の不仕合わせな親子に対して感じていたものは、果して彼の釈明する如く、純粋な同情に過ぎなかったであろうか。