Japanische Klassiker mit Furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme
現れ来り、深く肺腑に迫るものがあるのである。が、盲人の話は後に説くとして、先ず尼のことに注意を向けよう。尼は慶長五年佐和山の城が陥ったとき、よう/\十歳になるかならずであったと云う。然らば安積源太夫が嵯峨の草庵をおとずれたと云う寛永十八年の秋には五十一歳程になるのであるが、源太夫が見たところでは、色白く、目元すゞしく、さすがに賤しからぬ気品を備え、顔の肌にはまだ若々しいつやがあって、四十二三としか受け取れなかった、そうして立居ふるまいのしとやかなことは申すまでもなく、ちょっとした体のしぐさや物腰にたとえようもなくみやびなところがあって、尼とは云うものゝ、何処かに阿娜めいた、たゞ者ならぬ感じがした。聞書の筆者はそう書いた後に、噂に依れば此の尼は一と頃宴席などにも出で、座敷の興を添えたことがあったと云うが、さらでだに寄る辺ない女の身の、まして謀叛人の娘として世に疎まれる境涯になっては、そんなことでもするより外にたつきの道はなかったかも知れない、けれどもそれがほんとうだとすれば、定めし若い時分にはそのみめかたちを都の人々に騒がれたであろうと、そうも記しているのである。