Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 聞書抄 (ききがきしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.821 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

とそう云ってから、

世の中は不昧因果の小車や

よしあし共に廻りはてぬる

と、そう云う歌を二度三度繰り返して云っていた。それが、不明瞭な発音で、自分だけに分ればよいと云う気持で云われるのであるから、一度や二度ではなか/\聞き取りにくいのであるが、ちょうど一二年前に彼が畜生塚のほとりへ小屋を造って住み出してから、長い間常に同じことを云っているので、いろ/\な人がその文句を聞いた上でたしかめられた。そうしてそれがたしかめられると、次第に市民が此の行者を奇人か狂人扱いにして、家の内へ呼び込んだり物を施したりするのを厭うようになったので、近頃ではだん/\窮迫の度がはげしく、もう殆どほんとうの乞食になりかけていた。と云うのは、いったい彼は何処から此の橋の下へ流れて来た者か分らないけれども、今のような文句を暗誦するところを見れば、恐らく殺生関白の遺臣ではないのか。兎にも角にも関白やその一族たちの非業な殺され方に同情を寄せ、彼等に残酷な刑を与えた政道を批難し、豊臣家の天下を呪っていることは明かであって、そう云うことを口にする危険な行者と係り合いを持つのは、誰しも迷惑だったからである。