Japanische Klassiker mit Furigana
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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
Lesen Sie 苦心の学友 (くしんのがくゆう) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.732 Zeichen · 332 Bildschirme
「なぜでございますか?」
と照正様は不服らしかった。
「ご身分をお考えあそばしませ。山登りは下司下郎のいたすことでございますぞ」
「違います、西洋では名ある貴族が競ってアルプス登山を試みます」
「その西洋人のまねが私は気に入りません。一も西洋、二も西洋、私はどうも気に入りません」
「…………」
「古来山に宿るものは山賊山伏の類にかぎります。豊臣秀吉公や徳川家康公が富士登山をしたという史実がございますか? 大名は狩座のほかに山野を跋渉いたしません」
「それでは先生、鉄砲をお許しください」
「お殿様にも申しあげましたとおり、若様がたは丁年未満でございます」
「しかし私の友だちは皆書生の名前で鑑札をうけています」
「よそ様はとにかく、花岡伯爵家は花岡伯爵家でございます。お上の掟にそむくことはできません」
「…………」
「ご登山のことでございますが、第一、私は日本アルプスという言葉が気に入りません」
「ははあ」
「日本の山々には昔からりっぱな日本名がついています。なにを苦しんで西洋名を用いますか? 先年私は名古屋へまいって、日本ラインというところへ案内されました。これがまた気に入りません。