Japanische Klassiker mit Furigana
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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
Lesen Sie 苦心の学友 (くしんのがくゆう) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.732 Zeichen · 332 Bildschirme
「そうだとよろしゅうございますがね」
「そうでなくてどうする? お殿様じきじき折り入ってお願いがあるというんだもの。おまえはわしにもっと敬意を表さなければいけないよ」
とお父さんはいばってみせた。
晩ごはんのときも伯爵家の話が出た。なんだかわからないが、番町のおやしきからのおさたはみんなの心持ちを陽気にした。
「お父さん、とにかくおでんと蜜豆がいただけますね」
と正三君がいった。
「おでんと蜜豆?」
「ばかだなあ。あれは観桜会のときだけだよ。おやしきにふだんおでんや蜜豆があるもんか」
とお兄さんの祐助さんが笑った。この春二人で観桜会へお父さんのお供をしたのである。
正三君は兄さんが二人と姉さんが二人ある。一番上の兄さんはもう帝大を卒業して朝鮮総督府へつとめている。つぎの祐助君も来年出る。姉さんは一人女学校がすんで、もう一人在学中だ。正三君はこの四月から府立中学へはいった。五人が五人、みんなそろって成績がよい。お父さんは鼻が高い。
「うちの子供はみんなおれに似たんだよ」
とおっしゃる。
「いいえ、女の子は母親に似たんでございますよ」
とお母さんも権利を主張する。