Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

そして「上り舟、………」のあとの合いの手がいい。平凡なようだが、じっと身にしみて聞いていると淀川の水の音がひびくようだと云う。

「………きは淀川へ上り舟、ささえられたる北風に、身はままならぬ丸太ぶね、岸の柳に引きとめられて、歩みならわぬ陸地をも、上りつ戻り幾たびか、一と夜をあかす八軒家、雑魚寝をおこす網嶋の、告ぐる烏か寒山寺、………」

明け放たれた二階の縁からは船着き場に沿うた一とすじの路をへだててもう暮れがたの海のけしきが展けていた。淡の輪がよいの船であろう、「紀淡丸」と記した汽船が桟橋を離れて行くのだが、四五百噸にも足らないほどの船体がぐるりと船首を向き変えるとき、入り江の岸が船尾と擦れ擦れになるくらいにもそこの港は小さいのである。要は縁側に座布団を敷いて、港の出口をふさいでいる砂糖菓子のように可愛いコンクリートの防波堤を眺めた。堤の上の同じように可愛い燈籠にはもう灯がともっているらしいけれど、水の面はまだ浅黄色に明るく、二三人の男の燈籠の根もとにしゃがんで釣りを垂れているのが見える。別に絶景と云うのではないが、しかしこう云う南国的な海辺の町の趣は、決して関東の田舎にはない。