Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「いや、これは朝顔日記なんでいけないんだね」

と、老人は何を思い出したのか突然云った。

「玉藻の前とか、伊勢音頭とか、ああ云う物はなかなか大阪とは違っていて面白いそうだよ」

なんでも文楽あたりでは残忍であるとかみだらであるとか云う廉で禁ぜられている文句やしぐさを、淡路では古典の姿を崩さず、今でもそのままにやっている、それが非常に変っていると云う話を老人は聞いて来たのであった。たとえば玉藻の前なぞは、大阪では普通三段目だけしか出さないけれども、此処では序幕から通してやる。そうするとその中に九尾の狐が現れて玉藻の前を喰い殺す場面があって、狐が女の腹を喰い破って血だらけな膓を咬え出す、その膓には紅い真綿を使うのだと云う。伊勢音頭では十人斬りのところで、ちぎれた胴だの手だの足だのが舞台一面に散乱する。奇抜な方では大江山の鬼退治で、人間の首よりももっと大きな鬼の首が出る。

「そういう奴を見なけりゃあ話にならない、明日の出し物は妹背山だそうだから、こいつはちょっと見物だろうよ」

「ですが朝顔日記だって、通しで見るのは始めてのせいか僕には相当面白いですよ」

要には人形使いの巧拙なぞ細かいところは分らないが、ただ文楽のと比較すると、使いかたが荒っぽく、柔かみがなく、何と云っても鄙びた感じのあることは免れられない。