Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
――」
「そうは行かんさ、僕はずべらじゃああるけれども、そんなキマリの付かないことは嫌いなんだ」
しかし要がその難関を乗り越える仕事を最後の最後まで延ばしているのは、この場になってさすがにそれを口に出しては云えないけれども、いまだに事の成行きがどう変化するか分らないと云う一縷の望みを一寸先の未来に托しているのでもあった。妻は強気でいるようなものの、そのひた向きな感情の裏には一と入脆い弱気が心の根を喰っていて、ほんのちょっとした物のはずみに泣きくずおれてしまいそうに思える。そうなることを孰方も恐れていればこそ、そんな機会を作らないように互に避けているのではあるが、現にこうして相対している今の場合でも、話の持って行きよう次第で千里の彼方に飛び去ったものが一瞬のうちに帰って来ないものでもない。要は彼女が今日になって老人の裁断に任せるだろうとは夢にも予期していないながら、もしそうなったら自分もそれに従うより外にないと云うような、希望ともあきらめともつかないものが何処か胸の奥の方に潜んでいるのを、我から不思議にも疎ましくも感じた。
「それではあたし、―――」
妻はこれ以上向い合っていることに不安を覚えたのであろう、いつもの時間が来たことをそれと察して貰うために茶箪笥の上の時計に眼をやって、襲われたように立って着物を着換え