Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「誰だい、それは?」

と、要がきいた。

「中川さんの奥様、―――あなたの知らない方」

「お久、ちょっとこの火を見ておくれ。―――」

と、老人は下腹から懐炉の包みを取り出して、

「小屋が広いのに入りがないせいか、どうも冷えてかなわない」

と、つぶやくように云った。お久が懐炉灰の火を直すので、手が塞がっている隙に、要は気を利かして、

「いかがです、胃袋の方へもう少し懐炉をお入れになったら」

と、これも御持参の錫の銚子を取り上げて云った。

舞台の方ではもう次の幕が開きそうなけはいなのに、夫がのんきらしく、キッカケを作ってくれないので、美佐子はさっきからじりじりしてゐた。出がけに須磨から電話があったとき、彼女は実は「自分はちっとも気が進まないのだから、芝居の方は成るたけ早く切り上げる。そして出来たら七時頃までに会いに行くようにする」と云って置いたのである。尤も都合で分らないから、アテにしないでいてくれろとは云ったけれども、………

「明日一日、きっと此処が痛いだろうと思うわ」

彼女は膝頭を揉んで見せた。

「幕が開くまでそこに腰かけていたらいい」

そう云いながら夫が眼交ぜで、「まあ、今直ぐ帰るとも云いかねるから」