Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
鹿ヶ谷の方に隠居所を作って茶人じみた生活をしている六十近い年寄りとは、もちろん趣味が合う訳もなし、何かにつけてうるさく通を振りまかれるのにはいつも閉口するのだけれど、若い時に散々遊んだ人だけあって何処か洒落な、からっとしたところのあるのが、もうその人とも親子の縁が切れるかと思えばさすがになつかしく、少し皮肉な云い方をすれば、妻よりもむしろこの老人に名残りが惜しまれて、せめて夫婦でいる間に一ぺんぐらいは親孝行をしておいてもと、柄にないことを考えたのだが、しかし独断で承知したのは手落ちと云えば手落ちである。いつもの彼なら妻の都合と云うことに気が廻らない筈はないのである。ゆうべも勿論それを思いはしたけれども、実は夕方、「ちょっと神戸まで買い物に」といって彼女が出かけて行ったのを、恐らく阿曽に会いに行ったものと推していた。ちょうど老人から電話がかかった時分には、妻と阿曽とが腕を組み合って須磨の海岸をぶらついている影絵が彼の脳裡に描かれていたので、「今夜会っているのなら明日は差支えないであろう」と、ふとそう思った訳なのであった。妻は従来かくし立てをしたことはなかったから、ゆうべは事実買い物に行ったのかも知れない。