Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
要も美佐子も、別れる時はその心持でありたかった。やがてめいめいが新しい配偶者を持ち、新しい子を儲けるとしたら、その心持がいつまでつづくか分らないにしても、さしあたってはそれが一番気を楽にさせる方法だと思った。
「実は何だよ、こんなことを云うと笑われるかも知れないが、この三月にしようかと云ったのは子供のためばかりではなかったんだよ」
「ふむ?」
と云って高夏は、鍋の中へ眼を落してきまり悪そうに唇で微笑している要を視つめた。
「都合のいい時と云う中には季候のことも考慮しているんだよ。つまりその時の季候の工合で悲しみの程度が余程違う。何と云っても秋に別れるのは一番いけない、一番悲しみの度が強い。いよいよ別れると云う時に、『これからだんだん寒くもなりますし………』と、泣きながら女房がそう云ったんで急に別れるのを止めてしまった男があるんだが、実際そんなことは有り得ると思う」
「誰だい、その男は?」
「いや、そんな話もあると云うことを聞いただけなんだが」
「は、は、君はいろいろそう云う例を方々で聞いて来ると見えるね」
「こう云う時に人はどうするかと思うもんだから、聞くつもりはなくっても耳に這入るようになるんだよ。