Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「でもお父さんは性慾の方もまだ変形していないんじゃないの。今日だってお久が附いているでしょう」

「ああ云う女を好くというのがやっぱりいくらか骨董趣味だよ。あれはまるで人形のような女だからな」

「行けばきっとアテられてよ」

「仕方がない、それも親孝行だと思って、一時間か二時間アテられに行くさ」

ふと要は、妻が何となく出渋るのは外に理由があるんじゃないのかな、とその時感じたが、

「では今日は和服になさる?」

と、彼女は立って、箪笥の抽出しから、たとうに包まった幾組かの夫の衣類を取り出すのであった。

着物にかけては要も妻に負けない程の贅沢屋で、この羽織にはこの着物にこの帯と云う風に幾通りとなく揃えてあって、それが細かい物にまでも、―――時計とか、鎖とか、羽織の紐とか、シガーケースとか、財布とか、そんな物にまでおよんでいた。それを一々呑み込んでいて、「あれ」と云えば直ぐその一と組を揃えることの出来るものは美佐子より外にないのであるから、この頃のように夫を置いて一人で外へ出がちの彼女は、出かける時に夫のために衣類を揃えて行くことが多かった。要に取って現在の妻が実際妻らしい役目をし、彼女でなければならない必要を覚えるのは、ただこの場合だけであるので、そう云う時にいつでも彼は変にちぐはぐな思いをした。