Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
量からいえば、日ごろの平次にない過しようですが、軽口を交換しながらも、一向に酔った風はありません。
いやその軽口さえも、次第に少なくなって、更けて行く夜とともに、二人は銘々のことを考えて、ツイ黙り込む時間の方が多くなって行きます。
「何刻でしょう」
八五郎は冴えない眉を挙げました。
「先刻撞いたのは、上野の亥刻(十時)かな」
「少し遅過ぎやしませんか。やはりひとっ走り行って来ましょうか」
八五郎はたまり兼ねて起ち上がりました。そのころ佐久間町に住んでいたお静の母親の家まで、ガラッ八の足で飛べば、四半刻で行って来られるでしょう。
「じゃ、御苦労だが――」
平次もこうなるともう、強いて留める気にもなりません。いや、それどころでなく、もう少し早く迎えにやってみるのであった――といった、淡い後悔の思いが、シクシク酔わない胸にうずくのです。
八五郎が出かけた後の、家の中のさみしさはまた格別でした。
二本燈心に丁子が留って、ぼんやり照らしている部屋の隅には、お静が出かける時どんなに急いだものか、平常着の単衣をざっと袖だたみにして、その上に細紐が放り出してあるのも、妙に平次の酔いきれない感傷をそそります。