Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 157.440 Zeichen · 313 Bildschirme
手に取って引出されたものは、派手で艶めかしくて、思いのほか贅沢な若い女の着物の数々。
「女には、いろいろ男の方に見せたくないものがあるのよ。宜い加減にして、こっちへ顔を見せて下さらない、八さん」
「もう少しの辛抱だ」
八五郎の手は忙しく動いて、一枚一枚の着物を調べて行きますが、袂の中から襟の裏まで気を配るので、思いの外時間がかかります。
でも、何うやらこうやら一段落になりましたが、怪しいものは何んにもありません。
「お栄」
「――」
「お前はたんすから何を取出した」
「――」
ツイ今しがたまで、引っきりなしに口を動かして、八五郎を牽制していたお栄が、急に黙り込んで、返事をしないのは唯事ではありません。
どうかしたか? 八五郎はそういった不安に駆られて、境の唐紙をハネ飛ばすように開けました。
「あ、いない」
そこにはお栄の姿はなく、床柱の前には、見事に脱けた捕縄だけ、とぐろを巻いて畳の上に落ちているではありませんか。
「畜生ッ、何処へ失せやがった」
八五郎は狂気のように家中を捜しましたが、素よりお栄の影も形もなく、裏口の障子がここから逃げ出したといわぬばかりに半分開いております。