Japanische Klassiker mit Furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lesen Sie 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.879 Zeichen · 242 Bildschirme
夜は暗闇であり、巡査は殆どおらず、焼跡だらけで逃げれば捕まる恐れはなく、人間はみんな同じ服装をして特徴を見覚えられる恐れもなく、深夜の夜勤の帰りで不時の歩行が怪しまれず、懐中電燈の光すら後を追うてくる心配がない。あらゆる泥棒人殺しの跳梁する外部条件を完備しておりながら、殆ど一人の泥棒もオイハギも人殺しもなかったのである。それで人々は幸福であったか。つまり我々は虚しく食って生きている平和な阿呆であったが、人間ではなかったのである。
完全な秩序、犯罪に関する限りほぼ完全な秩序が保れていた。愛国の情熱がたかまり、わいているようだった。なんという虚しい美であろうか。自分の家が焼けた。何万何十万の家が焼け、さして悲しみもせず、焼跡をほじくっている。横に人間が死んでいる、もう、振りむきもしない。鼠の屍体に対すると同様の心しか有り得なくなっていた。かように心が痲痺して悪魔の親類のように落ぶれた時がきていても、食うことができて、そしてとりわけ欲しい物もないときには、人は泥棒もオイハギもしないのだ。欲しいものはせいぜいシャツか浴衣ぐらいで、まるで自分の物と同じ気持でちょっと風呂屋で着かえて出てくるくらいのことはするが、本心は犯罪に痲痺し落ちぶれきっていながら、泥棒もオイハギもやらない。