Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

また立慶河岸のお家もご無事でいられるか?」

「はい、おかげ様で、大津の叔父も、大阪の家も、みんな変りなくやっておりますが、ただ、変り果てておりますのは、この私だけでござります」

と、お米は、袖についている草の実を、指の先につまんで捨てた。

変りました――とみずからさびしくいう女の前で、かれは、いつか自分が安治川屋敷へ忍びこんだ際に、お船蔵の闇で救いを叫んだひと声の悲鳴を、今ふと、耳の底に呼び起こしていた。

「その後そなたは、阿波へまいっていたそうだが、して、いつこの大阪へ戻ってこられたか」

「森啓之助という蜂須賀家の御家中に、無理に、かどわかされて行ったのでございますから、戻ってきたというよりは、逃げてきたも同様なのでございます」

「ほう、それであの仲間が、無態にそちを捕えようと致していたのか」

「私はもう阿波へ帰るのは嫌なのでございますけれど、執念ぶかい宅助が、あの通りつけ廻しているので、川長の家へもウッカリ帰れませぬし、もうどうしていいか、路頭に迷っているところなのでございます」

と、顔に血をのぼせながら、そむいたまま、ソッと側へ寄りついて、

「で私は、ほんとに只今困っております。