Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

「そちも支度をせい、すぐにまいろう」

「は……」と、啓之助が取り散らした懐紙や扇子などをあわてて身につけている間に、三位卿は行燈を吹ッ消して、すたすたと廊下へ出た。

すると、さっきの簾戸の蔭で、

「もし、お待ちなさりませ」

という声がする。

「誰じゃ……」

急いているので語韻にも気が立っていた。

「お久良でございます」

「ウム、お久良か――」と有村はキッと唇を締めた。

「ただいま、船待場のほうへ御案内いたそうと存じて、支度をしているところでござります。天神の河岸のほうは、荷方の者や便乗のお人が混みあっておりますから、水夫などがどんな御無礼をいたさないとも限りませぬ。それに、船のお席も私がまいらぬと分りませんから、ちょッとお待ち下さいませ……ただいま、提灯を灯して、すぐにお供をいたしますから」

いっているうちに、お久良は店印のついた提灯を手に持って、有村の前へ姿を立たせた。

かれはかれ一流の読心的な態度で、眸に威をこめてジッとお久良の顔を凝視したが、その眼ざしを邪魔するように、下から射す円い明りの輪が、薄化粧の腮にふわふわとうごいて、才はじけた年増の笑くぼがなぶるように映って見える。