Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas

Aozora Bunko

瑠璃子は、今の場合、こうした不快な通知書を、父に見せることが、一番厭なことだった。父が、どんなに怒り、どんなに口惜しがるかが余りに見え透いていたから。

でも、こうした重要な郵便物を、父に隠し通すことは出来なかった。瑠璃子は、重い足を運びながら、父の寝室へ行って見た。が、父はまだ起きてはいなかった。スヤ/\と安らかな呼吸をしながら名残りの夢を貪っている父の窶れた寝顔を見ると、瑠璃子は出来る丈こうした不快な物を父の眼には触れさせたくはなかった。彼女は、そっと忍び足に枕元に寄り添って、枕元の小さい卓子の上に置いてある、父の手文庫の中にその呪われた紙片を、そっと音を立てずに入れた。何時までも、父の眼には触れずにあれ、瑠璃子は心の中で、そう祈らずにはいられなかった。

その日、食事の度毎に顔を合せても、父は何とも云わなかった。夜の八時頃、一人で棊譜を開いて盤上に石を並べている父に、紅茶を運んで行ったときにも、父は二言三言瑠璃子に言葉をかけたけれど、書状のことは、何も云わなかった。

願わくは、何時までも、父の眼に触れずにあれ、瑠璃子は更にそう祈った。どうせ、一度は触れるにしても、一日でも二日でも先きへ、延ばしたかった。