Clásicos japoneses con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
四
夜の静かなる闇には、彼等の話声を妨げる少しの物音もなかったのである。
四
夜は静だった。母と青年との話声は、二間ばかり隔っていたけれども、手に取るごとく美奈子の耳――その話声を、毒のように嫌っている美奈子の耳に、ハッキリと聞えて来た。
「稔さん! 一体何なの? 改まって、話したいことがあるなんて、妾をわざ/\こんな暗い処へ連れて来て?」
そう言っている母の言葉や、アクセントは、平生の母とは思えないほど、下卑ていて娼婦か何かのように艶かしかった。而も、美奈子のいるところでは、一度も呼んだことのない青年の名を、馴々しく呼んでいるのだった。こうした母の言葉を聞いたとき、美奈子の心は、止めの一太刀を受けたと云ってもよかった。今まで、あんなに信頼していた母にまで裏切られた寂しさと不快とが、彼女の心を滅茶々々に引き裂いた。
瑠璃子に、そう言われても、青年は却々話し出そうとはしなかった。沈黙が、二三分間彼等の間に在った。
母は、もどかしげに青年を促した。
「早く、おっしゃいよ! 何をそんなに考えていらっしゃるの。早く帰らないといけませんわ。美奈子が、淋しがっているのですもの。