Clásicos japoneses con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
が、何処にも傷らしい傷はなかった。が、それにも拘わらず、半眼に開かれている勝平の眼は、白く釣り上がっている。
「あゝ! こりゃいけねえ。奥様、こりゃいけねえぞ。」
そう云いながら、老人は勝平の身体を半抱き起すようにした。が、巨きい身体は少しの弾力もなく石の塊か何かのように重かった。
瑠璃子は、遉に驚いた。
「もし、貴君! もし貴君! 貴君!」
彼女は、名ばかりの夫の胸に、縋り付くようにして叫んだ。が、勝平の身体に残っている生気は、こうしている間にも、だん/\消えて行くように思われた。
おず/\顫えながら、座敷へ近づいて来た女中を顧みながら、瑠璃子はハッキリと少しも取り擾さない口調で云った。
「ブランデーの壜を大急ぎで持っておいで。それから、吉川様へ直ぐお出下さるように電話をおかけなさい! 直ぐ! 主人が危篤でございますからと。」
女中の一人は、直ぐブランデーの壜を持って来た。瑠璃子は、それをコップに酌ぐと、甲斐甲斐しく勝平の口を割って、口中へ注ぎ入れた。
勝平の蒼ざめていた顔が、心持赤く興奮するように見えた。彼の釣り上った眼が、ほんの僅かばかり、人間の眼らしい光を恢復したように見えた。