Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
五
兄と同じように自殺を決心する。
そう考えて来ると、信一郎は、烈々と輝いている七月の太陽の下に、尚周囲が暗くなるように思った。兄が陥った深淵へ又、弟が陥ちかかっている。それほど、悲惨なことはない。そう思うと、信一郎は、
『おい! 君!』と、高声に注意してやりたい希望に動かされた。が、それと同時に、血を分けた兄弟を、兄に悲惨な死を遂げしめた上に、更に弟をも近づけて、飜弄しようとする毒婦を憎まずにはいられなかった。
『汝妖婦よ!』彼は、心の中でもう一度そう叫んだ。が、信一郎が、これほど心を痛めているにも拘らず、当の青年は、何が可笑しいのか、軽く上品に笑っているのが、手に取るように聞えて来た。
信一郎は、見るべからざるものを見たように、面を背けて足早に門を駈け出でたのである。
五
新宿行の電車に乗ってからも、信一郎の心は憤怒や憎悪の烈しい渦巻で一杯だった。
瑠璃子夫人こそ、白金の時計を返すべき当の本人であることが解ると、夫人の美しさや気高さに対する讃嘆の心は、影もなくなって、憎悪と軽い恐怖とが、信一郎の心に湧いた。
青木淳の死の原因が、直接ではなくても、間接な原因が、自分であることを知りながら、嫣然として時計を受け取った夫人の態度が、空恐しいように思い返された。