Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
彼女は、一言も云わずに、ノートを信一郎の方へ押しやった。
信一郎は、夫人の必死的な態度に圧せられて、此の上何か云う勇気をさえ挫かれた。
二人は、二三分の間、黙々として相対していた。信一郎は、その険しい重くるしい沈黙に堪えかねた。
「如何です。此のノートを読んで、貴女は何ともお考えにならないのですか。」
信一郎の声の方が、却ってあやしい顫えをさえ帯びていた。
夫人は、黙して答えなかった。
信一郎は、畳みかけて訊いた。
「貴女は、青木君が血を以て書いた、此のノートを読んで、何ともお考えにならないのですか。青木君の云い草じゃないが、貴女の少しでも残っている良心は、此のノートを読んで、顫い戦かないのですか。貴女の戯れの作った恐ろしい結果に戦慄しないのですか。」
信一郎は、可なり興奮して突きかゝった。
が、夫人は冷然として、氷の如く冷かに黙っていた。
「奥さん! 黙っていらしっては分りません。貴女は! 貴女は此ノートを読んで何ともお考えにならないのですか。」
信一郎は、いらだって叫んだ。
「考えないことはありませんわ。」
彼女の沈黙が冷かな如く言葉そのものも冷かであった。