Clásicos japoneses con furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lee 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 209.260 caracteres · 418 pantallas
老公もつづいて側へ行ってみた。
「この面体は、よくご存じでございましょう」
と、格外は、傷負のうえに馬乗りになりながら、老公のひとみを覗きあげた。男のこめかみには小柄が深く突き刺さっている。血と泥にまみれて、それはふた目と見られない形相に変っていた。
「おお……日ごろ台所におる庖丁人のひとり。格外、なんでむごい手を下したのじゃ」
「見過ごせば、たちまちすべてを、ご城下のさる場所まで、密告しに走りましょう。この庖丁人も、紋太夫の息のかかった一名です。幸いに、その後の渡辺悦之進は、ひとつ穴のむじなと化してこやつの顔を見知っておりましたから、未然に防ぎが出来ましたものの、ご身辺諸事、およそかくの如きものと思し召し、ゆくゆくご油断あそばさぬように」
十四
老公は憮然としていつまでも唇をつぐんでいた。その唇は白髯につつまれながらやや顫いているかに見えた。――けれど相変らず慈愛にみちている眼は、格外の脇に組み敷かれている庖丁人の男の顔を、傷ましげに見つめながら、
「格外、その者をころすなよ」
と、注意することを、なお忘れなかった。
格外は、老公の寛大に、むしろ呆れたが、気がついてみると、庖丁人の男の抵抗は、もうぐったり弱まっていた。