Clásicos japoneses con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas
「臭い、臭い、女臭いぞ。これをみても、今のは女にちがいない。男に化けた切支丹屋敷のお蝶とかいう女にちがいない。そうだ、早くこの事を」
真っ白になった顔や手を、そこらの水溜りで忙しげに洗うと、刃物の付いた短い棒を小脇にして、あたかも風を呼んだ孫悟空が急な用達にでも出かける時のように、大川端から下谷方面へ、踵を飛ばして駈け出しました。
辰巳でもなく、北でもなく、夜ごとに何処へ通うのでしょうか、日本左衛門を乗せた猪牙舟は、隅田の本流から神田川をさかのぼります。
そして、朝になっては帰ってくる。
今朝も、まだ川洲の砂に千鳥の足痕さえない夜明け方に、率八の舟は、霞の中からゆうべの岸へ戻って来て、
「ほイ」と、揚げ櫓のしずくを撒いて、舳を洲の上へ乗り上げます。
ひらりと飛び上がると、率八は駆け出して、母屋の床下から炭俵や芋俵を抱えて来て、
「親分、今ひと燻べ焚きますから、体を暖かくしてお寝みなさいまし」と空地の一端で、ドカドカと焚火の焔を揚げ初めました。
「ああ人心地がついて来た」と、日本左衛門も背中をあぶる。
焚火に火照らされた眼で見ると、枯れ草の霜の屋根の白さが一倍冴えて真ッ白に見えます。