Clásicos japoneses con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas
「いけない、いけない! 金吾ッ帰れ」
二人の巣としている錦霜軒――船見山の山蔭さして、後をも見ずに駈けだしました。
「あとを閉めておけ。戸を。戸を……」と息をきって錦霜軒の中へ駆け込んだ万太郎の気ぶりは、何ともタダ事ではありません。
「どうなさいました、若殿」
金吾は合点がゆかないので、座に着くとすぐにこう訊ねましたが、
「水を……」
と、彼の色は紙より白い。
裏の流れへ出て、掛樋の水を器にうつして来ますと、万太郎はそれをグッと飲んで、
「ああ、驚いた」
と、初めて人らしく呟きました。
「実に、意外でございましたなあ、折角、組み伏せた怪しいやつの面を見てやろうとした途端に、いきなり若殿が駆け出されたので、金吾には、何が何やら一向理由がわかりませぬ」
「いや、そちの驚きはまだしもの事よ、この万太郎は、生れて以来、あのような意外な目に会った覚えはない」
「とはまた、一体どうした理で」
「力闘して、やっとわしがねじ伏せたあの覆面じゃ」
「はい」
「そも、何者かと、そちは思う?」
「分りませぬ」
「吉宗じゃ」
「げッ、……将軍家」
と言ったまま、金吾も色を失って、さすがに二の句もありません。