Clásicos japoneses con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas
だが、お蝶は多寡をくくっていました。
入れ札ではその密告者を決して当人に洩らさない掟です。龍平だって、まさか、私がそうしたのだとは知らずに死んだに違いない……。
「けれど、こんな姿になったのを見ると、私もいい気持はしないよ、ねえ龍平、お前が私をダシに使って、官庫の物を盗ませさえしなければ、お前だって、こんなことにはなりはしなかったのに……可哀そうね」
お蝶は、死者の妄念を無視しておりました。いつか死顔の形相に馴れて、恐怖を忘れていたものか、それともかの女らしい悪戯な心か、櫛を抜いてさらし首の乱れ髪を梳き上げてやる。
そして、
「龍平! あばよ」
急ぎ足に、山屋敷の方へ、五、六歩下駄を鳴らしかけますと、
「お蝶!」
と、獄門の首が呼び止めました。
二度目の声も、
「お蝶!」
と、たしかに龍平の生首が、獄門の上から呼んだ如く聞かれましたが、見世物のからくりではあるまいし、首がものを言うわけはないので、
「誰ッ?」
と、わざと声の甲を張って、怯け身を見せまいとしましたものの、思わず寒気に襲われて、ぞッと襟すじをすくめた証拠には、お蝶の銀のかんざしが微かに光を砕いています。