Clásicos japoneses con furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas
「おお」
と馬春堂は少し反って、
「おとといの晩の娘さんだったね」
「ええ……そのせつは」
あどけない笑顔を近づけて、伽羅油のにおいに馬春堂を咽せさせたのは、獄門橋で見た時とはまるで違って、いかにもおぼこらしい、混血児のお蝶であります。
お蝶を見ると馬春堂はまた心のうちで、伊兵衛が今もって帰らぬのはどうしたものかと、少し癪が甦ってきましたが、それはすぐ美しい娘の狎々しさに消されて、
「お開帳の帰り道かね」
「ええ、ずいぶん人が出ましたわね」
「あまり遅く帰ると、またこの間みたいな悪い奴につけられるよ。それにお前は今、地獄極楽の見世物を見て来たんだろう、あんなものを見て、よく丹下坂の森を帰られるな」
「だって、おじさん、地獄極楽なんて嘘ッ八はありゃしないでしょう」
「あるさ」
「おかしい……」
ホ、ホ、ホ、ホ、と笑ったはずみに、手にかかえていた包の中から一枚の小皿が落ちて砕け、お蝶の足元へ玉虫色の小片を散らしました。
「あ!」
「なんだい?」
「紅――」
口惜しそうに踏みにじッて、
「わざわざ京屋へ廻って買って来た寒紅なの。こっちの油を落とさなくってまアよかった」
「たいそうみやげ物を買い込んだじゃないか」