Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lee 江戸三国志 (えどさんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 577.271 caracteres · 1141 pantallas

Aozora Bunko

けれど、今坐っている観音堂のこの廻廊が、氷の上でも石の上であっても、そこを立つ勇気はない。

夜はだいぶ更けていると見えて、奥山の小屋の灯も、吉原通いの人どおりも、ばったりと途絶えて、傘のような御堂の廂をのぞいた以外な所は、霜に冴えて、真ッ白に見えるばかり。

すると最前から、伽藍の裏に倚りかかって、じいっとお蝶の方をながめていた三十前後の町人がありました。八丈の襟をかけた藍縞のはんてんに、虱絞りの手拭で頬被りをしているので人相は分りませんが、ふいと腕ぐみを解いてそこへ寄って来ると、

「姉さん、眼がさめなすッたようだが、そんな所で夜を明かしていると、風邪をひくだろうぜ」

と、じろじろとお蝶の身装を見廻している。

「有難う。ほんとにブルブル慄えてしまった、どこか、火の気のある所はないかしら」

「こんな所に寝るから悪いや、ここは、煙草の火も禁断だよ」

「だって……」と何か言いかけましたが、お蝶はその時になって、男の素性が気味悪く思われて来たので、ぷいと横を向くと、白い指を膝の上で躍らせながら、小声で、何かの唄をうたい出しました。

口のうちで唄っているので、よく聞きとれませんが、それは、手毬唄でもなし、琴唄でもなし、三味線にのる花街の唱歌でもありません。