Clásicos japoneses con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
「いらっしゃらないのですか。」
「いゝえ!」彼女は、そう答えるより外はなかった。
「杉野です。一寸お取次を願います。」
そう云われると、瑠璃子は一も二もなく取次がずにはいられなかった。が、階段を上るとき、彼女の心にふとある動揺が起った。『まさか』と、彼女は幾度も打ち消した。が、打ち消そうとすればするほど、その動揺は大きくなった。
杉野子爵の長男直也は、父に似ぬ立派な青年だった。音楽会で知り合ってから、瑠璃子は知らず識らずその人に惹き付けられて行った。男らしい顔立と、彼の火のような熱情とが、彼女に対する大きな魅惑だった。二人の愛は、激しく而も清浄だった。
二人は将来を誓い合った。学校を出れば、正式に求婚します。青年は口癖のように繰返した。
青年は今年の四月学習院の高等科を出ている。『学校を出ると云うことが、学習院を出ることを、意味するなら。』そう考えると瑠璃子は踏んでいる足が、階段に着かぬように、そわ/\した。まだ一度も、尋ねて来たことのない子爵が、わざ/\尋ねて来る。そう考えて来ると、瑠璃子の小さい胸は取り止めもなく掻き擾されてしまった。
が、つい此間青年と園遊会で会ったとき、彼はおくびにも、そんなことは云わなかった。