Clásicos japoneses con furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lee 真珠夫人 (しんじゅふじん) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 289.296 caracteres · 578 pantallas
その端に、伊豆の連山が、淡くほのかに晴れ渡っているのだった。
十月も終に近い葉山の町は、洗われたように静かだった。どの別荘も、どの別荘も堅く閉されて人の気勢がしなかった。
御用邸に近い海岸にある荘田別荘は、裏門を出ると、もう其処の白い砂地には、崩れた波の名残りが、白い泡沫を立てているのだった。
勝平は、葉山からも毎日のように、東京へ通っていた。夫の留守の間、瑠璃子は何人にも煩わされない静寂の裡に、浸っていることが出来た。
瑠璃子はよく、一人海岸を散歩した。人影の稀な海岸には、自分一人の影が、寂しく砂の上に映っていた。遥に/\悠々と拡がっている海や、その上を限なく広大に掩うている秋の朗かな大空を見詰めていると、人間の世のあさましさが、しみ/″\と感ぜられて来た。自分自身が、復讐に狂奔して、心にもない偽りの結婚をしていることが、あさましい罪悪のように思われて、とりとめもなく、心を苦しめることなのであった。
葉山へ移ってから、三四日の間、勝平は瑠璃子を安全地帯に移し得たことに満足したのであろう。人のよい好々爺になり切って、夕方東京から帰って来る時には、瑠璃子の心を欣すような品物や、おいしい食物などをお土産にすることを忘れなかった。