Classiques japonais avec furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
そして血糊の上から、膝の傷口を捲きしめると、彼の精気は再び月光の世界に、はっきりと蘇生ってきたが、同時に、あたりを見廻して、いまし方の、無慚な不覚が、彼の血潮の中にむらむらと無念を燃え立たせてきた。
あたりには、すでに船の影も、その船から、猿ぐつわをはめた女を拉してきた、荒くれ男どもの姿も見えない。どこへ行った?
新九郎は血眼になった。
「いかに、たしなみのない腕にせよ、対手が多勢にせよ、武士が町人どもの手込めにあって、この態とは、吾ながら浅ましい……」
新九郎は歯ぎしりを噛んだ。あの女を助けてとらせたい為に、五人の町人を向うに廻して、斬り結んでいたのは、今となってみれば夢中。いつか自分は手傷をうけて、気を失った際に、対手は逃げてしまったのだ。
「こんなことで、かりそめにも、鐘巻自斎を打ち込むことができようか」
彼は、よろばいながらも、懸命の力で立ち上がった。何かにつけて、新九郎を鞭打つ対象は、「鐘巻自斎」の四文字であった。
河原を抜けて、街道へ出ると、一筋の見渡される月明り、その小半丁先にあたって、点々と黒い人影、しかも晃めくものは、たしかに乱れ入れ合う剣の光だ。