Classiques japonais avec furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
新九郎はこの寮へ来てから、髪も伸びるままにしていたのを、今朝、御方が鏡台を出して、前を五分月代に、後ろの切下げを折り大髻に結い直してくれたのである。二人の間は、昨日とまるで打って変って打ち解けていた。
「おお、この方がどんなに似合うか知れませんよ、それに一人前の男らしくもある。昨夜から本当の男一匹になった新九郎様、お気に入りましたかいの?」
言葉もズッと砕けて、新九郎の顔へ自分の顔を摺り寄せて鏡に映した。そして、
「さ、長い間の人質も、お返し申しますぞえ」
とすっかり手入れの出来た来国俊を渡してくれた。それを見た刹那、新九郎はふと千浪や兄の面影を思い浮べたが、御方に焦かれ、一刀を小脇にして庭へ飛び降りた。
「あはッはははは」
覚明は彼を睥睨していきなり笑い出した。
「この覚明に果し状をつける程の奴、余程腕に、覚えのある者かと思った。汝は三、四年前に、拙者の道場で打ちのめされた腰抜け侍だな」
「おお、その腰抜け侍の新九郎が、改めての返報だ。果し状は伊達にはつけぬぞ……」
「優らしいその言い草、望みに任せて孔雀明王の血祭りとしてくりょうッ」
「洒落たことを! さッ、そっちに馬鹿な面をしている柿色の虫けらどもも、束になってかかッて来い」