Classiques japonais avec furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
………………
読み終った時、春日重蔵の顔色はまッ蒼。
吾にもあらぬ憤怒の眦、ビリビリッと寸裂した手紙を、蛇のように足に絡めたまま二、三間よろめき出した。
「あ、もし――」
千浪は自分の泪を忘れて、ぴったり、その胸へ抱き縋った。
「ど、どこへおいでなさるのでござります。もし重蔵様、どうなされたのでござります……」
「ちちッ……」
重蔵は身を顫わせ、血の出るほど、糸切歯で唇を噛みしめたまま、
「し、知れたこと、新九郎の後追いかけて、彼奴の迷夢を覚してくれる。醒めぬものなら、兄が情けで一刀両断」
「ま、待って……お気を鎮めて下さいませ」
「えい、お離しなさい、千浪殿そこ離して」
「ご不自由なお体して、何でそれがなりましょう、しばらく、もうしばらく新九郎様のご様子を見て上げて下さいまし」
「ああ! 拙者は、ただそなたが不憫、そなたが気の毒――それだけだ、それだけじゃ、唯それだけにこの腸を掻きむしられる……」
「…………」
「申すに事をかいて、大望は捨てたの、浮世は悟りすましたのと、兄を兄とも思わぬ不敵な奴、ああ腹が立つ……やわか、大月玄蕃を討つに、新九郎のごとき腰抜けの手を借ろうぞ、ええ、この足が、この片足さえ満足であったら、千浪殿にもこうまでうき目を見せまいものを」