Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 197 228 caractères · 394 écrans
「はや、敵の敗色は、瞭然として来ました。もう潮時ではございませんか」
信長の側にあって、始終、戦況を見ていた信長へこう促したのは、佐々成政であった。
「ううむ! よかろうッ」
信長は、すぐ成政をして、柵内の全軍の上へいわせた。
いわく、
「柵を出て、直撃、甲軍をみなごろしにせよ」
総攻撃の令だった。
丸山にいて動かなかった馬場信房は、その様子を遠く見ると、初めて、いまは信房の一命をすてる時なり――と、口の裡でつぶやいた。
高松山の一丘には、徳川方の旌旗が満ちている。大久保七郎右衛門、同苗治左衛門の兄弟も、その中に陣していた。
「兄上」
「なにか」
「きょうの御合戦は、当手こそ主体で、織田方は、御加勢でしょうが」
「いうまでもあるまい」
「だのに、今朝からの模様では、ほとんど、織田勢が主となって敵を悩まし、われわれが徒手傍観の体にあるのは、いささか徳川家の御恥辱かと思われます。戦後までも、長く織田家の下風に見られるような惧れもありましょう」
「しかし、今朝からの戦では、まだ鉄砲しか物をいっていない。鉄砲の数となると、織田家の御所有は四千六、七百挺といわるるに、御当家には僅々四、五百挺の数しかないのだ。