Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 197 228 caractères · 394 écrans

Aozora Bunko

秀吉以下、近づくと、

「この先によい寺があります。三珠院という真言寺が」

と、すぐ先に立ってゆく。

一叢の幽翠につつまれて閑寂な庫裡や本堂が見える。秀吉は山門に駒をすて、近侍たちとともにぞろぞろと入って行った。

声をかけても、誰も出て来ないのである。秀吉はかまわず本堂へあがって、本堂のまん中にひとり坐っていた。

にわかに庫裡のほうで、人の気はいがしはじめた。寺僧の耳に通じたとみえる。それとまた、城主の休息という思いがけない不意打ちに、寺僧たちは狼狽もしたにちがいない。

「騒がすな、気の毒だ。ただ早う茶をひとつくれい。喉が渇いた」

秀吉の声が本堂ですると、側の一室に見える衝立のかげで、

「はいッ、ただ今」

と、はっきり返辞がきこえた。

衝立のほうを振向いて、秀吉はひょいと小首をかしげた。

すずやかな声であったが、女とも思われない。寂とした伽藍のせいか、よく澄み徹って、しかも可憐なうちに力がある。

――などと彼が不審を感じているうちに、その眸へ向って、つつつと、小きざみに足を早めて、茶碗をささげて来る少年があった。

「…………」

黙然と、礼儀をし、小袱紗に茶碗をのせて、秀吉の前にすすめる。