Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 197 228 caractères · 394 écrans
城の東――約二十町ほど離れたところに一高地がある。平井山とよぶ。
秀吉はここに陣し、兵八千を周囲に配置していた。
一日、信忠が来て、ふたりして敵状をつぶさに視察した。
敵の南は、丘陵、山また山、播州西部の山岳に拠っている。
北は、三木川のながれ。東は、いちめんの竹林帯や耕地荒地。――そして三方に高い城壁をめぐらし、本丸、二の丸、新曲輪の三部を中心に、附近の丘にはなお点々と、数ヵ所の防塁を備えている。――といったような概観であった。
「筑前、急には参るまいの」
と、信忠は、眸を城へやりながら、傍らへ独り言のように質した。
「――所詮、急には抜けますまい。まわりは朽ちているようでも、まだ根は深い齲歯のようなものですからな」
「なに、齲歯」
秀吉の奇警な比喩に、信忠は思わず苦笑をもらした。
信忠は四、五日前から、奥の臼歯を病んでいた。
そのため顔がすこしいびつに腫れ歪んでいる。――それを見て秀吉が、三木城の要害堅固を、自分の齲歯にたとえていったので、おかしいやら痛いやら、頬を抱えて苦笑せざるを得なかったわけである。
「なるほど、齲歯とはおもしろい。抜くには、根気が要るの」