Classiques japonais avec furigana
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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
Lisez 江戸芸術論 (えどげいじゅつろん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 85 130 caractères · 167 écrans
時節はいよいよ夏の盛となれり。中巻第一図と第二図とは本所御船蔵を望む両国広小路の雑沓なり。日傘菅笠相重りて葭簀を張りし見世物小屋の間に動きどよめきたり。さて両国橋納涼の群集と屋形船屋根船の往来(中巻第三図)を見て過れば、第四図は新柳橋に夕立降りそそぎて、艶しき女三人袖吹き払ふ雨風に傘をつぼめ跣足の裾を乱して小走りに急げば、それと行違ひに薄べりと浴衣を冠りし真裸体の男二人雨をついて走る。首尾の松の釣船涼しく椎木屋敷の夕蝉(中巻第五図)に秋は早くも立初め、榧寺の高燈籠を望む御馬屋河岸の渡船(中巻第六図)には托鉢の僧二人を真中にして桃太郎のやうなる着物着たる猿廻し、御幣を肩にしたる老婆、風呂敷包背負ひたる女房、物売りの男なぞ乗合ひたり。駒形堂の白壁に日脚は傾き、多田薬師の行雁(中巻第七図)に夕暮迫れば、第八図は大川橋の橋袂にて、竹藪茂る小梅の里を望む橋上には行人絡繹たり。岸の上なる水茶屋には赤き塗盆手にして佇立む茶汲の娘もろとも、床几に憩ふ人々面白げに大道芸人が子供集めて長き竹竿の先に盥廻しゐるさまを打眺めたり。中の巻ここに尽く。
下巻は浅草観音堂の屋根に群鴉落葉の如く飛ぶ様を描き、何となく晩秋暮鐘の寂しきを思はせたるは画工が用意の周到なる処ならずや。