Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

Lisez あさひの鎧 (あさひのよろい) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 239 520 caractères · 475 écrans

Aozora Bunko

が、顔だけは夕顔の花か、芙蓉の花のように白く抽んで、それが歌声の聞こえて来る方へ――庭の方へ向けられた。

すさまじい姿に驚いたのであろう、猩々卯ノ丸は颯と立つと、傍らの楓の木へかけ上がった。

と、どうだろう、その時までは、いるとも見えず静まって、彼らの王なる卯ノ丸の動作を、凝視していた数百の猿猴が、八方の木々の枝葉の間で、嵐のように啼き出した。

彼らが揺するそのためでもあろう、木々は騒立ち軋り合い、にわかに山々谷々に、颪が吹くかと想われた。

が、卯ノ丸がまた静かに、楓の木の叉に蹲居して、桂子の様子を見守り出すと、猿猴の群れも啼き声をとどめ、木々の枝葉の間から、蛍火のような眼の光を、無数に点々と闇にともし、彼らの王を見守り出した。

その時、

「お姉様」

と呼びながら、館を巡って妹の浮藻が、浮き浮きと庭先へはいって来た。

「まだご写経でございますか」

――桂子はツカツカと庭へ下りた。手にはいつかしら白磨きの、握り太の如意をひっさげていた。

あらそう姉妹

「浮藻!」

と、桂子は声をかけた。

何んとない姉の殺気立った様子と、鋭い声とに驚いて、浮藻は楓の根もとに佇み、返辞もしないで息を呑んだ。