Classiques japonais avec furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
「春日重蔵殿、ならびに正木殿のご息女、上使でござります。ただし公ではござらぬ」
「は」
二人は意外な念に衝たれて土下座した。家中の使番石渡勘太夫は、非公式に、領主の内意を伝えて、一包みの餞別を置いて去った。それは一封の金子と、松平忠房の花押を据えた仇討の免状であった。
領主の城を伏し拝み、由良の伝吉と袂を別った二人は、数日後に、如意輪寺住職の紹介を持って、京都寄竹派の普化宗明暗寺に行って虚無僧の入宗許可を受け、重蔵も千浪も同じような鼠甲斐絹に丸ぐけ帯、天蓋尺八という姿になった。
永い道中、千浪の美しい姿と、跛行をひいた重蔵の武芸者姿は、あまりに人目立つからであった。そこで宗名も、重蔵は庵号をそのまま取って月巣と呼び、千浪は竹枝と仮に名づけて、行く行く玄蕃の踪跡を尋ねながら、中仙道を大廻りして江戸に入る心算で、木曾路から信州路へ入り、ようやく碓氷峠にまで辿りついて来た。
同じ日、同じ時刻ごろ、一方の長野街道から来た二人の浪人者は、宿の辻で見た、虚無僧姿に、恟ッとした様子だったが、いつか送り狼の如く刀の目釘をしめしながら、その後を尾けて行く。
千浪と重蔵とは、互いに、不自由な足と、弱い足をいたわり合いながら、密かに近づいている魔の跫音を夢にも知らず、だんだんと碓氷の深路へさしかかった。