Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
ほっと息を入れて、初めてそのところの黒い影を見た重兵衛。
「どなたさまか存じませぬが、思いがけないお助太刀、有難うございました」
と血刀置いて額いた。御方は、ただ軽く頷いて見せたが、調子を変えた作り声で、
「ご丁寧な礼には及ばぬこと、仕返しの意気地、天晴れなお志と見て助太刀いたした。少しも早く、その者の首を切って、生不動の親分とやらに手向けておやりなされ」
「や、どうしてそれをご存じでございますか」
御方は、つと、覆面の顔を反向けて、
「とにかく、ここは急いで立ち去るが御身の為じゃ、くどいことは訊いて下さるな」
こんがらはそれに取りつく言葉もなく、久八の首を切って片袖につつみ、兄弟分せいたかの遺物の髻を懐に入れ、前もって、新九郎に言い渡されている言葉通り、夜に紛れて、江戸から高飛びしてしまった。
四
昨日今日、忍ヶ岡の花の雲は、八百八町どこからも、薄紅色の衣をたなびかせた天女のように見えはじめて、遠くの富士と一対の美景になった。
鐘一つ売れぬ日はなし江戸の春。――その大江戸の花はここ三日と、出るわ、出るわ。町方の女房娘、若衆芸妓の花見小袖、目かつらの道化、渋い若旦那、十徳の老人、武家は編笠、町奴は落し差し、猫も杓子も、ぞろぞろと東叡山上野の丘へ登って行く。