Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lisez 剣難女難 (けんなんじょなん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 243 807 caractères · 482 écrans
老鶯はその時だけちょっと啼きやんで歌口を憩めた。
「千浪殿、いつかはこうしてゆるりとお話致したいと思っていたが、あの……この間お常殿の手から渡した、拙者の文は見て下されたか……」
そう云った新九郎は、俯し目になって袂を膝に抱えている千浪の蠱惑よりほか、すべての世界を忘れていた……お常は用にかこつけて外したかここに姿が見えなかった。
「はい……」
と千浪は乱菊模様の金糸を一本抜いて、爪紅をした綺麗な指尖へ巻いたりほぐしたりしながら、襟足まで紅淡くした。
「ではお読みなされて下さったのじゃな。そしてそなたの返事は何とでござります。返事のないのはご不承知でござるか」
「いいえ……」
とかすかに答えた千浪は血の顫きに上逆って、男の手がふんわりと肩にからんだのも現であった。
「それでは誓って下さる? 誓って下さるか」
「新九郎様、お偽りではござりませぬか――」
「偽りならよいにと仰っしゃるか」
「いいえ、誠ならどんなにうれしゅうござりましょう」
とふッさりした黒髪が新九郎の動悸へ打つかるように投げられた。
お常は容易に帰って来なかった。――それでも無上の幸福感に酔った二人には、瞬くと思う間に陽が淡れて来た。