Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 197 228 caractères · 394 écrans
彼は、背の荷物や衣服を、一つに括って、頭へ結いつけた。そして猪のように、石垣の下の草むらを這い、水流を測っていたが、やがて、ザザザと激流のなかへ身を進ませた。
烈しい水圧と共に、すぐ胸や足を遮るものがあった。河中へ縦横に張りめぐらしてある荒縄だった。縄には無数の鈴が鳴子のように結びつけてある。
「八幡。加護あらせ給え」
強右衛門は、神に念じた。鈴鳴子はりんりん鳴る。彼は、脇差を抜いて、身に絡む荒縄を、切っては泳ぎ、薙いでは泳ぎ、ようやく滝川の対岸へ手をかけた。
「はてな? 鈴が鳴ったが」
柵の陰で、敵兵の声がした。強右衛門は、すぐ下の岸辺に、息をこらしていた。
すると、べつな声で、
「鯉か鱸だろう。きのうも大きな魚が捕れた。梅雨時だからなあ」
――神の助け。強右衛門は、その跫音が遠く去ると、柵を躍って、驀しぐらに駈け出した。敵陣、敵地、どこをどう駈けたか、自分でも分らなかった。
――が、明けて午すこし前、かねて約束の雁峰山の上から、彼の手によって揚げられた狼烟は、まさしく天をつらぬいた。城兵五百の歓喜と涙のひとみに、その煙と空は、いかに麗しく見えたろうか。