Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Lisez 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 573 caractères · 178 écrans
銭形平次捕物控
一
一
「あ、八五郎親分じゃありませんか」
江の島へ行った帰り、遅くもないのに、土蔵相模で一と晩遊んだ町内の若い者が五六人、スッカラカンになって、高輪の大木戸を越すと、いきなり声を掛けたものがあります。
「誰だい、俺を呼んだのは」
振り返ると、海から昇った朝陽を浴びて、バタバタと駆けてきた女が一人、一行の前に廻って、大手を拡げるではありませんか。
「巴屋のお六よ、忘れたじゃ済まないでしょう。家は、大変な騒ぎ」
女は遅立ちの旅人が、眼を聳てるのも構わず、八五郎の袂を取ってグイグイと引くのです。
「待ってくれ、無暗に引っ張ると、袖口がほころびる。家へ帰ると、叔母さんに叱られる」
「冗談じゃない。紅白粉で、裲襠を着た叔母さんがあってたまるものか。此方には人殺しがあって二三人縛られかけているんだから、来て下さいよ、親分。何んのために十手なんかブラさげて、江の島詣りをするんだい」
女はまくし立てて、八五郎を引摺るのです。高輪車町の巴屋というのは、江戸の土産物も売り、店では一杯飲ませて、中食も認めさせますが、横へ廻ると立派な旅籠屋で、土地も家作も持ち、車町から金杉へかけての、物持として有名な家でした。