Classiques japonais avec furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 400 caractères · 387 écrans
「お痛わしいお痛わしいと言いながら、手前の方が先に泣き出すなんて……阿呆めが! 呆れ返ってものが言えねえ……」
あとは老人特有の口の中で語尾が消え失せて、私には聞き取れなかった。
「もういいよ! 爺や! そんなに藤やを叱らないで! 僕もう泣かないから……」と少年が、袂で瞼を抑えている婦人を心配そうに見上げながら、取り做し顔にそう言ったのが聞える。なるほど喉でも痛めているのか、弱々しいしかも子供に似げない掠れ切った声であった。
「なあに! 坊さま、爺はちっとも叱ってなんかいましねえ。あんまりお藤がわからねえことを吐すだで、言って聞かしてやっただけだで……そねいに気を揉まっしゃることはねえだ」
と老爺はせっせと台石に水を注ぎながら、坊さまと呼ばれた少年の方を振り向いて笑顔を拵えて見せたのかも知れぬ。顔は墓の陰に隠れている私の方からは見えなかったが、少年の機嫌を取るように高々としかも妙に低く笑ったその声のみが、空虚のように歯の抜けた感じを暮れかかる夕陽の妙に明るい空気の中へ響かせてきた。そして火を点けたのであろう、香煙がゆらゆらと墓の陰から立ち上りはじめた。