Classiques japonais avec furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 400 caractères · 387 écrans
無惨なる死体
「ええ、しようがないな!」
と苦笑して、貼りのこした部屋はそのまま、たいして気にもとめずに、やがて夫人や看護婦たちの笑いあっている茶の間へもどってしまわれましたが、博士が護符をはらなかったその一間というのは、この家へひっこしてきていらい、雨戸をしめきって、まだ一度もつかったことのない部屋、この屋敷の一番西のはずれにつきだしている、離れ座敷だったのです。
しかも、その離れ座敷こそは、百七十年のむかしには左近将監が、書見につかっていたあの居間……もっとくわしくいえば、小金吾を殺したあとに左近将監が急に引きこもって、若党の佐平治にいいつけて、二度も三度も左官屋をよんで、壁のぬりかえをさせたあの離れ座敷だったのです。
そして、その座敷をはりわすれたことが、やがて博士にとっては、とりかえしのつかぬ、重大な手おちになったということは、あとになって思いしられたことでした。
無惨なる死体
ともかくその晩は、ザクザクと落葉をふんで家のまわりをあるいている、げんきのいい若者たちの足音を、夢うつつのうちにききながら、博士たちはひさしぶりで安心してグッスリと床につきましたが、さすがに変幻出没きわまりない怪猫の怨霊も、この威勢のよい若者たちには、おそれをなしたものとみえて、その晩は、なにごともなく夜があけました。