Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

Lisez 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 400 caractères · 387 écrans

Aozora Bunko

夕暮れだから帰りを急いでいるのだなと深くもその時は気に留めず私も帰りかけたが、何の気なしに――ほんとうにそれは何の気なしにであった――私もまた今三人の立ち去って行った道を通って山を降りて行こうとしたが、そのついでに今三人の拝んで行った日野涼子の墓の前を通りかかったので、いつもの通り何の気なしに私も頭を下げたのであったが、その瞬間異様な感じがして思わず私は小首を傾げずにはいられなかった。確かに墓の廻りから夕暗を通してゆらゆらと線香の煙が立ち上っていたと思ったにもかかわらず、今鉄扉のこちらから二度透かして見ても三度透かして見ても、そこに線香らしい物は少しも供えてないのであった。しかも今日来た時に気がついて私の上げて置いた見窄らしい野生の花は悄然と淋しく挿さっている外には、今あの人たちがお詣りに来たにもかかわらずそこに花らしいものの影すらないのであった。

何とも言えぬ異様な気持に打たれて、私はいきなり鉄柵を乗り越えてつかつかと墓の中へ踏み込んで見た。そして墓に顔を圧し付けんばかりにして、その辺を眺め見廻したが私の眼に間違いはなかった。しまいには私は燐寸まで擦って隈なく調べて見たが、それでも花も線香も何にも上ってはいないのであった。